男性の頭

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 頭を上手に描くには、モデルの感情を意識しないようにして、客観的な視点を身につけなければいけません。さもなければ、一瞬一瞬の微妙な表情の変化や、モデルの雰囲気の違いに気を取られながら、いつまでも同じ頭を何枚と描き続けてしまうことでしょう。顔は千変万化するものであり、デッサンは一瞬のうちに顔から感じとった印象を表現するものでなければなりません。頭を、常に変化する人格としてではなく、静物のように、空間の中のただの物体として考えましょう。

 石膏像せっこうぞうや写真などから描けば、少なくともそれらは動きませんし、客観的に見られるので、初心者にとってはメリットがあります。この本の最初の内容として、平均的な頭、平均的な顔のパーツ、平均的な間隔を持つ、最も平均的な形をした頭を使った、客観的なアプローチを取り上げるのが合理的というものでしょう。人それぞれが持つ特徴は、それらを合理的で正確な基本構造に結びつけて考えられるまでは、あまりに複雑です。頭蓋骨そのものが構造物であり、それ以外のものは単なる飾りであることを心に刻みましょう。  

 解剖学や建築学は退屈に感じるかもしれませんが、建築家にとってはそうではありません。ノコギリやハンマーの使い方を覚えるのは退屈かもしませんが、自分の建物を作るときはそうではないでしょう。頭をメカニズムとして考えるのは難しいかもしれません。しかし、もしあなたがメカニズムを発明するのであれば、面白いに決まっています。いい頭であるためには、いいメカニズムでなければならないということを理解すれば、いい性能を出したいモーターに部品をはめるのと同じような興味を持って、頭を描くことができるでしょう。  

 そのためには、まず頭蓋骨にできるだけ近い基本の形が必要であることは明らかです。頭蓋を見ると、ボールの形に近く、側面は平らで、前部より後部がやや膨らんでいることがわかります。眼窩、鼻、上顎、下顎などの顔の骨は、すべてこのボールの前面に固定されているのです。私たちの第一の関心事は、ボールと顔面平面が一体となって、好きなように傾けたり回したりできるような構造を作図することです。そのためには、目に見える部分だけでなく、頭部を完全な立体で描くことが最も重要なのです。当然ながら、頭の半分以上は見えません。しかし作図の観点からすると、その見えない半分は見えている部分と同じくらい重要なのです。

 図1を見ると、下半分を透明にして、ボール全体の構造がわかるようにしていることがわかります。こうすることで、見えている部分の頭の絵が、頭を一周まわして見たようになり、見えない部分が見える部分のコピーとしてイメージできるようになるのです。昔、師匠に「見えない耳を描けるようになれ」と言われたことがありました。当時はかなり戸惑いましたが、後になってその意味がわかりました。頭を描くには、見えない部分を感じ取ることが必要なのです。

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