読者へのお別れの言葉
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この本の最後に、これまでの本の読者からいただいたやさしさあふれるお手紙にお礼を申し上げたいと思います。その数が多く、また私自身の時間の制約もあり、思うようにお返事を差し上げることができませんでした。私の本が皆さんのお役に立ったのなら幸いです。
デッサンや絵画に関する本がこれほど多く出回るようになったのは、この10年ほどのことです。もう一つ、余計なお世話かもしれませんが、この本を出す前に調べてみたところ、頭や手に焦点を当てたものはほとんどありませんでした。この2つは、商業アーティストや肖像画家にとってとても重要であるため、私はその空白を埋めることにしました。このような本は、まさにその題材によって生計を立ててきた人間が書くべきだというのが、私の信念です。その中で私は、理論は実践によって置き換えられると感じてきました。なぜなら、この考えに基づいた私自身の作品は、長期にわたって一流の出版物に販売されてその価値を証明してきたからです。
商業美術の分野には立派な人がたくさんいますし、学校にも同じテーマを扱える立派な先生はたくさんいます。しかし、すでにスケジュールがいっぱいの中で、執筆に費やす時間とエネルギーを見つけられるかどうか、それが主な問題です。しかしながら、興味をそそり、たのしく取り組めるような努力には、それに相反する欲求を抑えるだけで、そこに時間を割り当てることができることを私は発見しました。この本の多くは、夜間や他の仕事の合間を縫って書かれたものです。私が望むのは、もし自分がこの本を書く時間を見つけることができたのなら、他の人も同じようにこの本で勉強する時間を確保できるだろうということです。私の努力の目的は達成されましたが、この本が世に出て、私の望むような役目を若い人たちのために果たすことができるかどうか、いまだ心配は尽きません。
現在、この分野でもっとも貢献している人たちは、本で得られる知識があまりない中で、あちこちで情報を得ながら、個人的な練習や実験を繰り返して、苦労して育ってきた人たちです。本は誰にでも有用なわけではありませんが、本によって個人の努力をより実用的で有益なものにし、必要な知識の習得を早め、その結果、絵描きがより長いあいだ活躍できるようになります。
私は、この本を閉じたからといって、読者が頭や手の研究をやめてしまうことを意図しているわけではありません。私の目的は、読者が自分の能力を最大限に発揮するために、しっかりとした基礎のもとで読者がスタートできるよう手助けすることです。私たちは、最終的に立体感と優れた構造が見てとれないようなアプローチでは、頭部をうまく描くことができないことを知っています。キャラクターを描くには、詳しい分析と、頭部の全体的な解剖学の理解が必要です。その分析の仕方と、頭を描くときに起こることの理由がわかったならば、皆さんの進歩は大いに加速するでしょう。
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