パート2:女性の頭
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アメリカの広告や雑誌の挿絵において、女性の頭をうまく描く能力は、お財布事情にもっともよく貢献してくれます。商業美術には多くの部門がありますが、これほど儲かる部門は他にありません。この技術は、広告代理店、編集局、カレンダー制作会社の仕事につながるものであり、ほかの何物にも代えがたいものです。デッサンによる肖像画は、見事な絵画よりも価格が安いので、売るのがずっと簡単です。デッサンは、きれいな額縁にはめれば家のどこにでも飾ることができますが、油彩の肖像画は、おける場所といえばリビングのマントルピースの上のスペースくらいなものです。男性は、凝った絵画よりも、自分や妻や子供たちがきれいに描かれたデッサンを好むことが多いです。幸いなことに、絵描きはこのような絵をあまりお金をかけずに絵画よりもはるかに短い時間で描くことができ、売り値もふつうの家計の予算内に抑えることができます。デッサンによる肖像画には、見すごすべきでない可能性を秘めています。肖像画を描くことは楽しい仕事です。アルバイトにもなるし、割のいい仕事です。ある家族の習作を描けば、他の家族も興味を持つようになります。このような習作は、居間、玄関、オフィスなど、凝った家具があまりない場所で魅力的な絵になります。自分の子供のスケッチをいらないと思う母親はほとんどいないでしょう。この国には、肖像画を上手に描く絵描きがすでにたくさんいます。値段は50ドルから150ドル、あるいはそれ以上で、数時間の仕事にしては悪くありません。これらのスケッチは、カメラで撮影した写真をもとに、写真的な見た目に絵描き個人のもつ能力や知識を加えて描かれることもあります。
女性の頭を描くときは、髪の表現に自由さとゆとりを持たせるようにしましょう。写真的な表現で髪の束やカールを表現するよりも、シンプルな面の方が効果的なことが多いのです。もう一つの重要な性質は、前に指摘した、ブロック状の効果です。カメラはすべてをその丸みで見ますが、絵描きはリズムと角度をものを見るのです。
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