男性の頭

色調トーン

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 線による表現から色調トーンによる表現へ進むとき、私たちは非常に大きな一歩を踏み出すことになります。というのも、色調トーンとは物体に当たる光の影響のことだからです。デッサンには絵画のような微妙な色調トーンは必要ありませんが、それでも明度は多かれ少なかれ関わってくると考えなければなりません。最初は被写体を強く照らすか、ある程度単純な光と影を持つ被写体を選ぶとよいでしょう。影の形はきちんと描かないといけません。また、影の形は物体の表面に生じるものですから、物体そのものの形と、そこにできる影の形の両方を考えなければなりません。そのため、光と影はできるだけシンプルにします。まず、光源は1つに絞ってください。後で逆光でも置きたくなるかもしれませんが、決して2つの光が同じ場所に当たらないようにしてください。さもなければ、ライティングに誤りが生じ、物体の形がインチキくさく見えてしまいます。というのも、光、中間調、影が物体の形を定義することによって、はじめて形が存在できるからです。もしも光がなかったら、形は見えません。

 光がよく拡散している場合、物体の形は、私たちが輪郭線だけでその形を表現したのと同じように見えます。もし光が全ての方向から来るならば、物体の形はたいらになってしまいます。なぜなら、中間調、影、キャストシャドウは、光源に面していない物体から生まれるからです。なお、キャストシャドウとは、影が壁などの別の平面に続いていたり、あごの下の首に落ちていたりすることを言います。キャストシャドウには輪郭りんかくがあり、その輪郭は光の当たる方向によって決まります。キャストシャドウと影の違いですが、ふつうの影は、光が届かなくなって物体が暗くなることをいいます。丸い形には、影に到達する前に中間調があり、やがて中間調は影と同化します。四角い形や角ばった形では、光がさえぎられた部分や光が届かない部分のフチに鋭く沿って、影ができます。鼻は明るい光の中でキャストシャドウを落とします。ほほは丸く、ゆるやかなカーブをしているので、影を光になじませています。

 この光と影のなじみ具合が、良い絵と悪い絵の違いになることがあります。影のエッジ(フチ)の変化がぼやかされすぎていたり、なじみすぎていたりすると、絵は個性を失ってしまいます。また、十分になじまないと、絵は硬くもろい印象を与えてしまいます。光と影のなじみ具合を判断するよい方法は、「正しい面取りだと確信できているのか、それともよくわかっていないのか」と自分に聞いてみることです。面に見えなくなるくらいエッジを柔らかくしすぎると、絵が滑らかで写真的な印象になってしまいます。そのため、写真だと面がはっきりしていないことも相まって、写真をお手本にするときは面をしっかり描かなければなりません。

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