男性の頭─リズム

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 リズムが生まれつきある人もいれば、努力しなければ身につかない人もいます。鉛筆は、文字を書くように窮屈きゅうくつな指の間にはさんで持つのではなく、親指と人差し指ではさみ、手のひらを使って持ちます。指を動かさないように、手首と腕を使って紙の上で鉛筆をスイングする。それが、リズミカルな線を描く方法です。絵を描くために、指を使うのではなく、手全体を訓練してはいかがでしょうか。すると動きは指先ではなく、腕全体と関連付けられるようになります。しばらくは、ものを大きく描いてみましょう。解剖学の有名な先生であるGeorge Bridgemanジョージ・ブリッジマンは、4フィート(※約1.2メートル)の棒の先に取り付けたクレヨンで絵を描いて講義を説明していたそうです。彼の解剖学の絵の中には、実際の何倍もの大きさのものがありましたが、それはとても美しかったそうです。  

 リズムは私たちの身の周りにあるものですが、それを見て認識するためには、自分自身を訓練する必要があります。リズムとは、直線でも曲線でも、線の端の向きが変わるまでにできる一番長い線だと言えるかもしれません。長い直線の持つ表現力は、たくさんの小さなヒゲのような線に勝ります。飛翔ひしょうする矢が、まさにリズムのお手本です。水の動きや波の動きもそうです。野球ボールの描くアーチ、野手がボールを捕るときの手の下げ方、女性の髪の動きにも、すべてリズムがあります。絵描きの手の動きを反映したような、途切れることのない線の流れとでもいうのでしょうか。  

 どのようにするかはわかりませんが、リズムは身につけられると私は信じています。ぎこちなさは訓練不足から生まれます。一方リズムは、訓練をすることで、体の動きに無駄がなくなり、体の各部位での連携が取れることで生まれます。ひょっとするとリズムは知識と能力がともに発揮されることからも生まれるかもしれません。リズムは、カメラやプロジェクターでは決して得られないものです。リズムを感じつつそれを表現しようと努力するか、はたまたリズムを感じずに作品を終わらせてしまうか、そのどちらかです。紙の上で鉛筆をスイングして、自由に線を引いてみてください。初めからうまくできる人なんていませんよ。

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