女性の頭
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図49と図50は、歳をとったときの特徴をあつかっています。年配の女性のデッサンは、脂肪があっても許されるように思えるたった一つの場所です。ふくよかなおばあちゃんは、誰からも愛される存在です。
解剖学の知識は、年配の女性を描くときにもっとも発揮されます。若い女性は、顔の解剖学をがんばって隠そうとするので、彼女たちがしていることを我々も絵を描くときにすれば、一番喜ばれます。しかし、遅かれ早かれシワはやってきます。シワを目立たなくさせることはできても、筋肉などのフォルムはしっかり考慮しなければいけません。頬には新しいフォルムが生まれ、筋肉が皮フの中や下にくっつく様子の兆候が現れるようになってきます。もはや骨は皮フにしっかり覆われていないため、表面に出てきます。同じ理由で、筋肉と筋肉のあいだにポケット状のフォルムができます。やわらかい皮フは、小さな塊となって目立ち、あごの方へひだ状にやや垂れ下がり始めます。それについては寛大になって、加齢を重視しすぎないという優しさもありますが、そういったものを完全に無視すれば、個性と似顔絵のそっくりさの両方を失うことになります。成熟の中に、また、老齢の中にさえも、美は存在します。歳をとって個性が隠しきれないほど光って現れ、若い時の欠点や軽薄さをほとんど捨て去った、個性あふれる老女の気品と魅力に勝るものはありません。絵は親切な心で描いてください。しかし捏造はしてはいけません。不誠実な仕事はあなたの評判を傷つけるものであり、このことは世界中のどんな顔のどんなデッサンよりも重要です。歳をとっていく過程を研究し、何が起こるかをよく理解した上で、やさしくあつかいましょう。
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