読者と少しおしゃべり

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 顔を上手に描くという目標を達成するにはまず、頭蓋骨はやわらかく、圧力をかけることによって特定の形になると考えるのが最もシンプルな方法です。ゴムボールを押しつぶして体積を変えずにさまざまな形に変えるようなものです。頭蓋骨の形は実にさまざまですが、実際に大きさを測ってみるとたしかにその通りだとわかります。つまり、どの頭も体積はほぼ同じで、形だけが違うということになります。例えば、柔らかい粘土で頭蓋骨を作るとき、板ではさんで様々な形にプレスしていくといったところです。そうして、同じ体積の頭から、細い頭、広い頭、広がったあごなど、いろいろな形ができるのです。しばらくして頭蓋骨の構造に慣れてくると、これらのいろいろなバリエーションをうまく表現できるようになり、事実上、どんなタイプでも納得のいくように描けるようになります。同時に、どのタイプでも理解しながら描くことができるのです。顔の骨に皮や筋肉がどのように分布しているかを理解する頃には、同じ頭でも表情を描き分けることができるようになっていることでしょう。頭蓋骨は位置が決まっていて、顎をのぞいては動かないこと、皮や筋肉は可動で常に変化し、健康や感情、年齢にも影響されることを覚えておいてください。頭蓋骨が完全に成長しきった後、その形は生涯を通じて変わることはなく、皮や筋肉などの様々な外観の構造的な基礎となります。ですので、どうやって描くかを考えるときの基本はいつも頭蓋骨にあり、目や鼻など他のすべての顔のパーツは頭蓋骨の中に、あるいはその上に構築されているのです。

 頭蓋骨から顔のパーツの間隔がわかります。この間隔が、絵描きにとっては顔のパーツそのものよりも重要になってきます。顔を組み立てているときには、顔のパーツはあるべき位置にあらねばならないのです。そうなれば、顔のパーツを描くのに苦労することはありません。しかし、その位置が決まっていない状態で描こうとすると、ほぼ確実にうまくいきません。目はへんてこに見えて、口は微笑むのではなくニヤリといやらしく笑って、顔は奇妙でひどい表情を浮かべてしまいます。このような顔を修正しようとして、目を眼窩がんか(目がおさまる頭蓋骨のくぼんだ部分)に収めるかわりに頬をけずり、あごのラインがくずれればひたいを描き足すというように、どうしても間違った方向に進んでしまいます。輪郭りんかくを描くときからすでに、頭全体の作図が始まっていることを理解しなければなりません。このことは、この後のページを読んでいただければ、きっとおわかりいただけると思います。

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